Pharmaceutical Journal 

Vital Statistics

 一般の人には全然"Vital"でない情報を書き留めておくことにする。『アメリカの薬学部の現状とその統計』である。先日のAmerican Association of Colleges of Pharmacy(AACP)が発表した統計(1998)である。
・PharmD Programを持つ大学は全米に75あり、そのうち私立は26しかない。
・その入学競争率は平均3.5倍であり、1997年には15984人の新入生を迎えた。そのうちBachelor DegreeをPharmacyに持つ学生は3796人を計上する。
・64.2%が女性であり、12.0%がMinorityである。
・1997年、トータル7772名にPharmDが授与され、その62%が女性である。

一方、
・MS/PhD ProgramをPharmaceutical Scienceに持つ大学は全米に60ある。
・1997年のFull-timeの大学院生は2929人で、その47.3%が女性である。
・1997年、トータル358名にPhDが授与され、そのうち39.1%が女性である。

 さてこのように同じ薬学を専攻していても、臨床薬学に重きを置くPharmDとPharmaceutical Scienceに重きを置くPhDの二つに大別される。しかしながら、その需要の多さから圧倒的にPharmD Programへの入学者数が多い。年間2万ドル近くかかるPharmDコースにどうしてこんなに学生が集まるのであろうか?その答の一つに、『卒後の破格な待遇』というものがある。前回のJournalにも書いたが、薬剤師を要するPharmacyの競争は非常に激しい。その競争に生き残る一つの手段には有能な薬剤師を配置することが必要となる。そうなれば、当然高額の給料を提供することが格好のえさとなる。結果、ここリッチモンドでも新卒のPharmDでも5万ドルは固い。PharmDの最低年齢が25であることを考えれば、とてつもなく魅力的な職業である。これが場所によっては6万ドル近くにもなるのである。2万ドルx5年間払っても十分ペイできると考えたくなるのもわからなくない。
 一方のPhD Programであるが、ここにもこの統計にはないもう一つの事実が隠れている。『アメリカ国籍を有する大学院生の少なさ』である。VCUを例にとってみると、現在15名の大学院生のうちアメリカ国籍を有するのは3名のみである。あとの12名は自分も含めた国際留学生である。VCUが特殊というわけではない。どこの大学でもそのようである。この一つの原因にPharmD Programへの極端な人の流れがあるのは言うまでもなかろう。そして彼/彼女ら国際留学生の多くが卒後もアメリカに残り、製薬企業の科学者として一線で働くわけで、企業は多国籍になる一方である。これがアメリカの就労ビザ発給数が一向に減らない理由なのかもしれない。

(October 24, 1999)
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