Pharmaceutical Journal 

Manly Dignity Part II

 さてVIAGRAの続き。FDAからの再三の警告の効果か、アメリカ国内におけるVIAGRAへの殺到は沈静化しつつあるらしい。ところが一方、先日のワシントンポストに、日本のBlack MarketでVIAGRAがとてつもない高値で取り引きされていることが報じられた。しかも手に入れたお方(患者?)はご丁寧に俳句なんぞを詠み上げて発表しているというから、アメリカ側には滑稽に映ったようである。ちなみにその俳句(本当は川柳かも知れない)、こちらではこう紹介されている。

Impotence is cleared ! Next is to have my hair back.

Viagra, my separated wife came back to me.

確かに日本の法律では未承認薬であっても個人使用の範囲内であれば合法入手のものである限り罰せされることはないが、どうやら危険な薬という意識が不足しているようにも思える。現在、新宿歌舞伎町界隈(Tokyo's red-light districtというらしい)では30錠が14万円以上で取り引きされているとのことである(ちなみにアメリカ国内では$100程度)。
 さて当然のことながら、このような日本国内の現状をサポートする人間がアメリカにいるわけで、いわゆる仕手集団がする場合もあり、時には留学生がアルバイト代わりにしているとの情報もある。医師の処方箋さえあればいくらでも手に入るため、中には何人かを雇って入手、マージンを上乗せして売りさばいている人もいると言う。密輸入も盛んで、ある新聞の記事によれば成田空港だけで摘発されたケースだけでも12件、3万5千錠になるという。インターネットを使った個人輸入に至ってはアシがつきにくいため、かなりの数が入ってきていることは容易に想像がつく。そして12月21日、ついに日本国内における製造及び輸入承認が中央薬事審議会特別部会において答申されたことが報道された。これにより99年1月には、処方箋を必要とする医療用医薬品として承認され、春先にも発売される見込みとのことである(朝日新聞)。この処置は先述した国内での不法入手を問題視した結果と考えられ、申請(7/24)から半年での異例承認となるとのことである。
 ではこのVIAGRA、どの程度危険なのであろう?FDAによる公式発表によれば現在までに130人の事故死が報告されており、その大半が心臓発作を起こした結果とされている。日本でも不法入手した患者が今年の夏(自分の記憶が正しければ)に死亡しているはずである。視覚に対する副作用も報告されており、これを受けて『アメリカ連邦航空局はフライト6時間前からのVIAGRAの服用を禁止した』とある。我々薬を専門とする者にとって、ステロイド以上に危険な薬という認識があることは一般の人々は知る由もない。しかしふと気付いたが、どのパイロットが何の目的で、フライト6時間前にVIAGRAを服用する必要があるのだろうか?VIAGRAの薬効は服用後1から2時間で有効である。つまりフライト5ないし4時間前に必要だから飲むわけで、通常の航空会社のスケジュールに則れば、すでに空港に着いて天候やルートさらに緊急時の打ち合わせなどをしている頃である。そんなときにVIAGRAの薬効が必要とは、、、疑問である。
 確かに男として生まれた以上、その主たる役目を果たせなくなったつらさはわからぬでもないが、一方で人間である以上与えられた刹那を知ることも大切なのではないかと思う。先の俳句ではないが、奥さんもいなくなってしまうくらいなのだから。しかし、彼らはバイアグラで治ったことを理由に戻ってくる奥さんに不満はないのだろうか?これも疑問である。

(December 21, 1998)
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