Pharmaceutical Journal 

Mis-prescription

 突然であるが、アメリカ人は薬好きである。『頭痛や筋肉痛にアドビル』となるだけでなく、サプリメントとされるビタミンやカルシウム剤も毎日定期的に服薬する。つまりかなりの薬信仰があり、圧倒的な世界1位の市場を形成するのも十分うなづける。しかし、その薬信仰がどうやら間違った使われ方に進んでいるようである。先日の全米医学協会(AMA)の発表によると、子供の注意散漫や活動過多のコントロールに抗うつ剤などの成人用精神安定剤を投与されている幼児(2-4才)が1.5%もいると言うのである。実はこのことはリッチモンド周辺でも起きていることは、うちのファカルティから雑談で聞いていた。それは、『コミュニティの薬局で処方されるこれら精神安定剤の一部が子供を対象にしているらしい』ということだった。このことはいくつかの問題を含んでいる。まず安全性の立場から言えば、これら成人用の薬は子供、特に幼児への使用に対する臨床試験はされていない。つまり、危険な要素を多大に含んでいると言うことである。次に処方を了解する医者の存在である。たとえばHMO(会員制健康保険医療団体)の指定する医療機関の場合、カウンセリングよりも廉価なこれら薬の処方を優先にしているのである。そして最後に、それを承認する保護者と学校である。リッチモンドの場合、幼児ではなく学童が問題となっていると聞いたが、その多くは教師から保護者への診断依頼からコトが始まっている。教師も保護者も薬の効用は認めている層であり、それら薬で子供の注意散漫などがコントロールできれば認めてしまうであろう。つまりは、薬信仰の弊害である。日本の場合、精神安定剤の使用を極端に嫌う傾向があるため、日本もそうなるとは言い難いが近ごろの狂気沙汰の事件を聞くに、そういう治療の必要性を説き出す政治家がでかねないとも言えよう。
 かく言う自分は日頃薬に接しているからかどうか、極端な薬敬遠傾向である。『薬はあくまでも毒である』と言う認識は消えていない。その結果、使わなくてはいけないときはあくまでも必要最小限に使う。そして飲んだあとに、添付文書とか見て、色々考えてしまうのである。『おお、ここが解離するんだな』、『動態は2コンパートメントか』、『副作用としてこんなのがあるのか』とか、、。まったくの職業病である(^^;。。

(March 10, 2000)
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