Monologue on a Fine Day 

Safe?, No, Kidding!

 先日、MCVにいる数少ない日本人と話をしていたとき、「リッチモンドは比較的安全だ」との感想を聞いた。自分が知る限り、ここは全米でも危険な部類の街である。ただ危険を感じるところにさらされていないだけなのである。犯罪発生率、殺人事件数、ドラッグ、レイプ、ありがたいことにどれをとっても結構上位にランクされている。大学にはUniversity Policeがいて、女性は夜6時以降はなるべく大学の提供するエスコートサービスを使うことを指示され、ガイダンスではペッパースプレーの携行を薦められる。これのどこが「安全」なのであろうか。しかしそう感じるのも無理はない。大抵の日本人は安全を第一に非常に治安がいいところに住んでいる。そこではいわゆる裕福な生活が営まれており、車なんてロックしなくても何も盗まれない。すべてがその中で事足りるので気がつかないだけなのである。一度ダウンタウンの危険な地域に踏み入れれば、車を運転していて信号で止まることさえ危険な街なのだ。事実、リッチモンドには州の刑務所があり、その周辺一体は迷い込んだ人以外は感じようのない恐ろしさが漂っている。なぜか自分は2回ほど迷い込んだが、幸運にも何事もなく戻ってこれた。
 アメリカにおいてこの大きなギャップは言わば「光」と「陰」である。「光」の部分だけを見せられれば、誰だってアメリカはいい国だと言いたくもなる。実際は想像もできないような「陰」の部分があり、それを見ずしてアメリカを語ることなど到底できるわけがない。したがって、自分は盲目的なアメリカ礼賛者を快く思えない。そして、残念ながらその「陰」の大きな担い手は黒人となっている。当然、被害を被るのも黒人のケースが多くなる。カフェテリアで偶然一緒のテーブルについた黒人のお母さんはこう語った。「息子はサイエンスが好きで、本当だったら来年の秋から大学に行くはずだったんですよ。でも道を歩いていて、からまれちゃって、、。」その息子さんは一週間たった今、まだ意識が戻らないそうである。これでもリッチモンドは安全な街と言えるだろうか?自分はそうは思わない。ただ幸運にも見せてもらえないだけなのである。

(October 27, 1997)
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