Monologue on a Fine Day 

"Career-up"

 日本人のTOEFLの平均点が501点で最下位から脱出したとの報道があった。TOEFLはアメリカカナダのほとんどの大学が義務づけている英語の試験で670点満点、4年生大学では550点を必要とするところが多い(昨年から方式が変わって200点満点になったが、ここでは旧式のままにしましょう)。これはこれで喜ぶべきことであるが、気をつけるべきは受験者層である。社会人が多く受験するTOEICと異なり、TOEFLは留学がその先にあるために、受験者層は比較的英語力のある日本人である。その後、TOIEC700点を昇進の条件とする企業が増えたとの報道もあった。TOEICは同様の公的機関の主催する試験だが、こちらは1000点満点。自分もそうであったが、新卒の研修期間に義務的に受験された方も多かろう。ちなみにこれらの試験、聞き取りと文法読解で設問が構成されており、そこに会話と作文は含まれていない。
 そうした試験の結果、晴れてアメリカに留学した学生が今、こちらでの就職先に苦労する話を多く聞くにつれ、それら多くの留学生がしている間違った思い込みに気がついた。彼/彼女らは『英語はできるけれど、ネイティブと比較されるから難しい』と思っている。しかし、残念ながら『英語ができる』のは当り前の条件なのである。では、専門以外に何が留学生にとって武器になるのか?それは『日本語』、『日本文化』であり、『日本語のできるアメリカ人っぽい日本人』なのである。では自分ならどういう職業を探すか?アメリカに支社を持つ日本企業か、日本にある外資企業であろう。まともに普通のアメリカ企業にぶつかっていってはよほど実力がない限りは砕けるだけである。もう一つはキャリアデベロップメントという考え方である。新卒の段階で望み通りの就職先でなくてもいいのである。そこでキャリアと経験を積み、次へのステップアップにつなげる。それを視野に入れての就職活動。自分の場合、新卒で非専業製薬企業を選んだ。これは工学部出身である自分に薬学部出身のひしめく専業製薬企業は不利と判断したからである。実はその段階では、近い将来での専業製薬企業を考えていた。そのための非専業製薬企業であり、入社当時から『会社に固執はない』と思っていた(なんて傲慢な新入社員だったんでしょ(^^))。結局、そのキャリアアップ構想は上方修正されるのだが、その過程に生活レベルを質素にする必要が生じた。これもキャリアップの一過程と割り切っていたが、一方で現在の博士取得後に金銭面での妥協はしなかった。現在もまだキャリアップ構想は続いている。その構想の最終到達点は自分の『夢』である。しかしながら、その『夢』に到達できる自信はこれっぽっちもない。ただ努力を続けるのみである。
 さて、先日読んだ字幕翻訳の戸田奈津子さんの言葉。『語学ができることはスタートラインでしかない。問われるのはむしろ日本語の力』。このことは特に留学生が認識すべきことではないかと思う。

(March 9, 2000)
Back to main page